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skittles

フロリダ州オーランド市。

昼間は暖かいけれど、日が沈めばさすがに肌寒くなる2月末。
17歳のトレイはガールフレンドのシャノンを家に送り届けてから
角の店でお気に入りのスキットルズとアイスティーを買って家路についた。

暗くなりつつある住宅街を歩いていると
雨粒がぽつぽつと顔に当たった。

「フードがついてるの着てきて正解だったな。」

トレイがそう呟きながら背中のフードに手をかけた時
自分の少し後ろを歩いている男性に気が付いた。
彼は携帯電話で話しをしながら、鋭い目をしてトレイを睨みつけている。
17歳になるまで、自分の肌の色で色々な目にあってきた。
睨まれるぐらいはいつもの事だ。
トレイは気を取り直して、フードを目深に被ると家路を急いだ。

ところが、少しも歩かないうちに
先の男性が歩調を速め、トレイとの距離を縮めてきた。

トレイはすぐに携帯からついさっきまで一緒にいた
シャノンに電話をかけた。

『トレイ? どしたの?』

「誰かが俺の後を追いかけてるみたいなんだ。」

『え? なんで?』

「知らないよ。 でも、白人の男みたいで
後ろからどんどん近づいてくる。」

『なにそれ、気持ち悪い。 走って逃げちゃって!』

「いや、走ったら刺激するかもしれないから、早足にするよ。」

そう言いながらトレイが歩調を早めながら振り返ると
男性はすでにトレイのすぐ後ろに迫っていた。

「なんでついて来るんだよ?!」

トレイが怖くなって駆け足になりながらそう怒鳴ると

「お前こそ、こんなトコで何してるんだ!」

と男性はトレイに鋭い怒号を浴びせながら
突然、襲い掛かってきた。

耳から携帯電話が離れる瞬間
シャノンの金切り声が聞こえたような気がした。

自分に馬乗りになって拳を振るう見知らぬ男を
なんとかして振り落とそうとしたが
自分よりも身体の大きい男はそれを許さなかった。

「助けてくれ! 誰か、助けて!」

住宅街だ。
すぐ側に灯りの点いている家がある。
誰かが自分の声を聞いて飛び出してきてくれるのではないかと
叫び声をあげた。

「助けて! 誰か来て!」

なぜこの男が自分に襲い掛かってきたのか
そんなことは、もうどうでも良かった。

「HELP! HELP ME!」

声を限りに何度もそう叫んだ。
きっと大した時間ではない。
けれど、トレイには永遠に感じられた。

とうとう、トレイは自分の顔や身体に滅多やたらに降ってくる拳から身を守るため
助けて! と叫びながら、自分の拳を相手に向かって必死に振るった。
自分の腕が空を切った後、何度かごつんと鈍い音がして
相手の身体のどこかに自分の拳がぶつかったのが解った。

「・・・の野郎・・・。」

男は口の中でもごもごと何かを呟くと立ち上がり
ポケットから冷たく光る銃を出すと、トレイに向けた。

「NO!!! PLEASE DON'T! PLE...!」

パン!

無情な乾いた音と同時に全ては真っ暗になった。

芝生の上で動かなくなったトレイのすぐ横には
彼のポケットから滑り落ちたスキットルズとアイスティーが
冷たい雨に濡れていた。


2月26日。
ヒスパニック系の白人男性で自警団長のジョージ・ジマーマン容疑者(28)は
自衛居住区で買い物から帰る途中のトレイボン・マーティンさん(17)を射殺。 
出動した地元警察はマーティンさんと小競り合いになった際の正当防衛だという
ジマーマン容疑者の言い分を無条件で認め
ルティーンであるはずの薬物・アルコール検査や犯罪履歴チェックをせず
彼の銃と銃の免許の剥奪もせずに無罪放免とした。 (ABC News より)

この時、射殺されたトレイボンの所持品は
スキットルズキャンディーとアイスティー1本だけだった
とも報道された。


3月16日。
息子の死を不審に思っていた両親が地元警察に再三リクエストしていた
事件時の911コールがやっと公開される。

まず、ジマーマン容疑者が事故直前に警察に電話して
フードをかぶった不審な人物がコミュニティー内を歩いていると説明している。
その際、彼はトレイボンのことを黒人差別用語で呼び
早足で彼から逃げるトレイボンを追いかけている。

もう一つの911コールは事件が起こった場所の目の前の家からで
通報している女性のバックグラウンドでは
トレイボンが助けを求める悲痛な叫びが何度も何度も聞こえてくる。
そして、銃声がした途端、その声が聞こえなくなる。

これを聞いたトレイボンの両親はABC ニュースのサポートを受け
FBI に徹底捜査を依頼する。

3月19日
FBIと司法省が本格的な捜査を開始すると発表。

一方で、事件のショックで入院をしていた
トレイボンの彼女が取材に応じ
携帯での彼との最後の会話を話す。


3月23日現在。
ネット上では、トレイボンの事件に衝撃を受けた
黒人、白人、アジア人、ヒスパニック、老人から子供まで
全ての人種、年齢、性別の人達がフードを目深に被り

「I am Trayvon Martin.」 (私はトレイボン・マーティンです。)

というサインを掲げた写真をUPし続ける。

ネット上で行なわれていた
ジマーマン容疑者の逮捕を求めた
幾つかの署名サイトの署名者の数が
一気に膨れ上がる。 

そして、アメリカ全土ではラリーが行なわれている。

NYのユニオンスクエアのラリーでは
トレイボンの写真や、トレイボンが持っていたという
スキットルズキャンディーや、アイスティーを手に持った人々が多勢集まった。

Rally_at_union_square_2

Trayvonmartin_march_2

Skittles_2

NBAチームのマイアミヒート。

Miami_heat_for_trayvon_2


ハワード大学ロースクール。

Howard_tm_2


スキットルズキャンディーとアイスティーしか持っていなかった
17歳の男の子の死が、今、アメリカ中を揺さぶっている。

あるサイトでは 「解らなかったら、こう考えて欲しい」 と訴えかける。

 もし、トレイボン(黒人)が銃を奪い取って
 ジマーマン(白人)を反対に撃っていたとしたら?
 彼の正当防衛が認められたと思う?

求められているのは、ジマーマン容疑者の逮捕だけではない。
今までアメリカが直視するのを避け続けてきた
昔からの根深い問題をしっかりと見直すことだ。

Trayvonmartinunionsquare1_2

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くーる

(おまけ)
前半のお話は事件後 ABC NEWS で報道された
幾つかの記事をもとに書いてみました。 
彼女の名前は偽名ですが
取材で話された会話の内容を日本語訳して書いてます。

911コールはアメリカ全土に公開されました。
ようつべでも聞けます。 (英語です)

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